日本酒よもやま話         8.「冷や(ひや)」は 冷酒(れいしゅ)か 常温か

 

お客様からご注文を受ける際に「冷やで美味しいのを」とのお言葉をいただくことがあります。

   「美味しいの」についてはおいといて、

私がそのお言葉を受けた際に確認するのが、「冷酒ですか?」ということ。(お客様のニュアンスで「常温ですか?」と言葉を換えてお尋ねすることもありますが。)



実は 「冷や(冷や)」という言葉は昔ながらの意味で言うと常温の状態のお酒を指すものなのです。



冷やさないのに「冷や(ひや)」と言うのはなぜか。

昔 冷蔵庫など日本酒の飲み方は 温める(燗) か そのまま(常温) かでした。「温」の反対で常温は「冷(ひや)」というわけです。




ついでに…
太古の昔 日本酒は常温で飲んでいたようです。酒を温めるという記録が見られるのは平安時代から。そして、酒を年中 温めて飲むようになったのは江戸時代後期頃だそうです。江戸も平安もその昔も現代から考えれば遠い過去のことですが、とにかく冷蔵庫等で冷たくした酒という概念がなかったということ。お金持ちは氷室の氷でオン・ザ・ロックにして酒を飲んだという記録もあるようですが、これは例外。お金持ちというものは人とは変わった体験ができるものですから。




日本酒を冷やして飲むことが増え始めたのはここ2、30年のことでしょうか。最近は冷酒で飲む方の方が多いかもしれませんね。日本酒の「テキスト」を書名で名乗る本にも「冷や」=「冷たい酒」と認識していると思われる記述があったので、少々驚きましたが。


言葉は徐々に変化するものですから、「冷や」という語が「冷たい酒」を意味するのか、「常温の酒」を意味するのか、どちらが正解って言えず、言葉の意味の移り変わりの途上においてどちらも正しいかなって思うんですが、紛らわしいことは間違いない。なので、私はあまり「冷や」という言葉を使わず、「冷酒(れいしゅ)」「常温の酒」という言い方を選ぶのです。なにか「冷や」に変わるそれぞれにぴったりの語はないものですかねぇ。

…なんだかまとまりのないグダグダな文章になってしまいましたが、何が言いたかったかというと、

 例えば居酒屋さんなどで常温の酒のつもりで「冷や」と注文して冷やした酒が出てきても、または逆のパターンでも、闇雲に怒らないであげて下さいということです。結構 お店や 或いは個々の店員さんによって「冷や」の認識が違うのよ〜。








                    
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