日本酒よもやま話  7.日本酒の種類を知るために   2) 生(ナマ) いろいろ

生(ナマ)というとまず思い浮かべるのはビールかもしれませんが、
ここではもちろん日本酒のお話し。
日本酒でいう「生」か否かは加熱処理[=火入れ]の回数によります。
(余談ですが、ビールの場合は瓶と樽で中身が同じであっても樽詰めのもののみ「生ビール」と呼ぶことが多いようです。)


「生」の説明前に 生ではない日本酒の一般的な工程をごくごく簡単に示すと…


   米→精米→洗米→蒸米→麹造り・酒母造り→醪造り→上槽(搾り)→
   
→滓引き・濾過→火入れ1回目→貯蔵→加水→火入れ2回目→瓶詰め


     お酒の種類によって上記の工程のうち 滓引き、濾過、加水という作業は
     あったりなかったり、順番が前後したりですが、そこを含めると
     ますます複雑になりますので今回はその点 省略です。

  生ではない日本酒の工程では火入れ作業が2回行われるのです。
   火入れの目的は 殺菌することと 日本酒の酵素の働きを止めて品質を安定させることにあります。



で、「生(ナマ)な日本酒」についてですが、タイトルで「生(ナマ) いろいろ」としたように、日本酒の「生」には3種類あります。

  @生酒      醪を搾った後、全く火入れを行わない日本酒。
            新酒の時期に「しぼりたて」等と称して販売される
             ものはこれにあたります。


  A生貯蔵酒  
上記工程のうち1回目の火入れをおこなわないもの。


  B生詰酒   
上記工程のうち2回目の火入れをおこなわないもの。
             秋に「ひやおろし」と称して販売されるものは
             これにあたります。



ABは加熱処理が施してありますが「生(ナマ)」の言葉がついているのは面白いですね。
生の種類についてラベルに表示する義務はありませんが、生であればたいていの商品に明記されています。(2度火入れのお酒の場合その旨明記したものは多くありません。)

いずれの生も2度火入れのお酒に比べフレッシュな味わいが特徴だと言われます。



@の生酒 は3つの中でも特にフレッシュという言葉がふさわしいお酒で、搾ってすぐに貯蔵せずに出荷される製品もあるため 開栓直後には微かな発泡感が感じられるものもあります。この微発泡感や生きた酵母によるフルーティーな香りをより楽しむために冷やして飲まれることが一般的です。
時間とともに最も品質が変わりやすいのもこのタイプで、開栓後 日ごとの味わいの変化を楽しむのもおもしろいかも。基本的に「要冷蔵」と表示されている製品が多いと思いますが、製品によっては常温で長期間保管することによって更に美味しくなった というものもあります。


Aの生貯蔵酒 も冷やして飲まれることが多いと思います。火入れにより酵母の働きは止められるため生酒に比べると落ち着いた香りで軽い口当たりのものが多いかな。
こちらも冷蔵保存が一般的。



B生詰酒 の代表格は「ひやおろし」かな。(最近は「ひやおろし」を名乗っても生詰酒ではないものもあるようですが。)
AもBも ともに1回火入れのお酒ですが、BはAに比べ熟成の落ち着きがあるお酒が多いように思います。AはBに比べ貯蔵期間がごく短いものもあるようなので、火入れのタイミングによる違いではなく 熟成期間の長短による違いかもしれません。
ほどよく熟成したお酒は冷たい状態で飲むよりも、ひや(常温)〜お燗した状態で飲んだほうがお酒の旨味を感じやすいかな。





「かな」「かも」と曖昧な言葉でいろいろ書きましたが、言葉の感覚も味の好みも ひとそれぞれ。他人にベストが決められるものではありません。
冷やして飲むのも温めて飲むのも、すぐに飲むのも熟成させてみるのも…飲み方に間違いはないと思います。お酒用語は選択の際の目安に留めご自分の美味しいと思う飲み方で日本酒を楽しんだらいいんじゃないかな。





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